特許って世のためになってる ? 104
ストーリー by reo
なってるともいえるし、なっていないともいえる 部門より
なってるともいえるし、なっていないともいえる 部門より
nobuhiro 曰く、
欧州議会で議席を獲得した Pirate Party (海賊党) のインタビューで、特許システムの廃止を主張している (CNET Japan の記事より) 。
政党の名前からして、ふざけた主張かと思っていたのだが、読んでみると実に合理的な内容である。特許システムは、企業秘密などによって技術が広まらない害をなくすために作られたはずなのだが、現在ではむしろ技術利用を阻害する要因となっている。特許を廃止すれば、研究開発費用を大きく抑制でき世の中はむしろ効率的になるだろう、と言う主張である。
製品開発の現場で、製品の特許調査や特許回避で不毛な作業を経験したエンジニアなら頷く部分が多い主張ではないだろうか。日本でも、こういう合理的な主張をしてくれる政党がでてきて欲しいものだ。
前編の著作権は 5 年で十分も興味深い記事なので是非。素人考えからすると、特許がないとベンチャーが育つ余地が失われるようにも思える。ベンチャーが育つ別のアプローチを考えるべきなのか…?
制度の問題かな? (スコア:5, 興味深い)
特許制度そのものの問題ではなくて、運用の問題じゃないのかな、と思う自分がいます。
個人的に感じる疑問点はCNETの記事でほぼ網羅されていて、技術者としての自分は主張に大いに賛同できるのですが、自分の別の部分はいまひとつ納得しきれていません。
例えば、リンク先の初っ端で「特許不要」とされている医薬品は、特許が必要な分野の一つだと思うけどなあ…。
まあ、いずれにせよいきなり特許制度をなくせというのは無理な話でしょうし、できるところから改善してもらうのは良いこと。現状はしょーもない特許が多すぎる。(なにが有用でなにがしょーもないか、という議論はさておき)
# しょーもない特許の一例としては、問題の解決方法として安直すぎるため、
# 普通の技術者は特許にしようと思いもよらないようなもの…とかかな。
# 一部で有名な(/.JにもIDをお持ちの、あの)人の例でいえば、こんなもの [jst.go.jp]のどこが「発明」じゃ。
Re:制度の問題かな? (スコア:2)
まあ確かに現状の特許制度は、他者を排除するために (もしくは多額の特許使用料をせしめるために) 利用されるケースが非常に多いように感じますね。本来は広く利用してもらうことが目的であるはずなのにね。
制度を手直しするとしたら、やはり特許使用料に上限を設けるんでしょうかね。その発明にかかった費用に相当する額 (×一定の定数) とか。
制度疲労を起こしていて有害になりつつある(Re:制度の問題かな? (スコア:2, 参考になる)
エイズ治療薬を巡って、先進諸国の製薬メーカがアフリカなどの後進諸国と争ってる事例 [nifty.com]とか、供給が追いつかないタミフルの非ライセンス生産での争い [soei.com]とか見てると、特許制度をベースにして研究開発費用を回収するというビジネスモデル自体に問題が出てしまっているように思えますけど。
特許制度は、基本的に特許を出した人や法人に独占製造・販売権を与えることで研究開発のインセンティブを与えようという物ですが、そうであるが為に需要がなんぼあっても供給者の都合だけで価格が決められてしまって南北格差を拡大させる結果を常々もたらしている。
同じ先進諸国の国内でも金持ちだけが特許の恩恵を受けられて貧乏人は特許の恩恵に浴せない。
もっと深刻なのは、リンクした後者=タミフルの製造販売を巡る争いの延長線上にある話なんですが、最近先進諸国で遺伝子自体に特許が適用されるようになってから鳥インフルエンザなどの疫病の発生源など、将来バイオサイエンス上有望になるような生物株を保持している国々の企業が自国の生物株を無断もしくはタダ同然で持ち去って、独占的な富を得ようとする行為に対する警戒感が強まっていて、
それ自体はこの数十年間の間、これら先進国の企業が「未開の地」に踏み入って・先住民族が製法を伝承してきた農法や薬に対して特許を主張し・認められて、これら先住民族の商売の機会を奪っていたばかりか場合によっては先住民族自体も特許に違反してるとつるし上げて、その上で特許の成果である医薬品などの商品を高価な価格で独占的に販売するような悪質な収奪行為がまかり通った事に由来しているわけで…(カラハリ砂漠のサボテンの医薬効果に対して、現住民族を無視する形で英企業が特許を習得し・ファイザー社に高額で転売した事例 [purnama.gr.jp])
この、タイを震源地に起きたエイズ治療薬への強制特許実施権行使の争い [democracynow.jp]が直接的なきっかけになっているのですが、H5N1鳥インフルエンザウィルス発病者の多いインドネシアが、ウィルス株をWHOに引き渡しても遺伝子解析やワクチン開発能力で劣って資金的にも貧困である自国や同じような後進国が先進諸国の大企業の成果を高価に売りつけられるだけで自国の鳥インフルエンザ患者の治療になんら役立たないとウィルス株の引き渡しを強硬に拒否してきた事例(今は引き渡しに合意していますが)での製薬会社とインドネシアなどの東南アジア諸国の主張の食い違いを見ていても、
特許が何ら人類の進歩にも福祉にも貢献しなくなってるのではないか…と思えてならないです。
まったく別の(資本的な要請=投資の回収の一環として独占特許が組み込まれていて、投資家も特許目当てに投資してしまってる現状とは別の)研究開発のインセンティブを新たに作る必要があって、そこに乗っかる企業だけ乗っかってください。的な形に枠組み改めないとどうしょうもなくなっていませんか?
Re:制度疲労を起こしていて有害になりつつある(Re:制度の問題かな? (スコア:2)
いくつか「それは事実ですか」「その推論は論理的に誤りではないですか」と問いたいポイントがあるけど、とりあえずこれだけ。
「どうしようもなくなっているとは思いません」。現行の運用に問題があるとは思いますが、それは運用を改善するのが最も早く、かつ最小限の変化で問題解決にいたると考えます。
おっしゃる問題が「特許という制度そのものに起因する問題であり、運用の見直しでは解決できない」と主張されるのであれば、きちんとそれを書いてください。論拠が書かれていないので、私にはどれも運用で解決できそうな問題に思えます。
# 「制度そのものじゃなくて運用の問題だよね」という意見(#1623663)への反論ですよね? これ。
小手先の改善でやれるほど世界の傷は浅い傷ではない(Re:制度疲労を起こしていて (スコア:1)
「特許により独占的な権益を付与する事で研究開発に対するインセンティブを与えるという特許の根本的な考え方自体が、資本主義の高度化と言うか独占資本主義・特に研究開発リソースの大資本への集中や特許という独占権益自体が莫大な金を産んでしまうような方向に資本主義が進んでしまった事によって破綻している」
ということの一例としてバイオサイエンス系の研究・取り分け医薬品に於いて、特許が本来報われるべき生物素材を提供した人々やその成果を真っ先に享受せねばならぬはずの貧しい人々を排除して巨万の富を大企業や投資家にもたらすのみに齎すために専ら特許が使われてる現実を示したのですが。
# 後、モンサント社の種子ビジネスが種子を売りつけた相手の農家をとことん管理して
# モンサント社の種子がないと営農できなくされる…そこに歯向かう人々や自分が食うための
# 作物を別個に作付けする事をやめない人々に対しては特許権侵害を
# 理由とするもの凄い高額の損害賠償を提訴する…問題とかも特許制度がもたらした同様の悪弊なのですが。
つまりは、今の特許制度のモデル自体が既に時代遅れと言うか「運用の改善」では到底、特許制度の運用がもたらしてる深刻な社会的な問題を是正することは不可能な所まで来ててしまってるということです。
特許制度の根本理念にある研究開発のインセンティブの与え方自体が知の独占だけではなく(それから派生する)もの凄い数の搾取や収奪を作りだし・そして大規模な資本を持つ人々以外にその搾取の特権階級に新しく入り込む資格を与えないで搾取・収奪される側と搾取・収奪を行う側の固定化を齎しているのはそれだけ独占資本主義が強固になったことではありますが、そうであるからこそ特許制度自体を廃止する必要があると思いますよ。小手先の制度改善でどうにかなるような弊害がそんなにないような甘い状況ではなくなっています。
だから、「特許制度でインセンティブを与えるのはやめにして、別の思想でインセンティブを与えるように根本から変えるしかなくなってるだろう」的な事を書いた訳で…
Re: (スコア:0)
>例えば、リンク先の初っ端で「特許不要」とされている医薬品は、
>特許が必要な分野の一つだと思うけどなあ…。
個人的にはそれほど必要とは思えないです。
(研究者の立場ではなく、一般ユーザーの立場からすると)
・「医薬品が研究開発が盛ん」という知識は持っている
・他社が特許を持っている場合、(なんらかの契約をしないかぎり)生産できない
・その他社の生産能力が小さかった場合、薬の生産量が少なくなる
・薬が不足したり、薬の単価が上がり一般人が購入できなくなる
というようなことを考えてしまいます。
Re:制度の問題かな? (スコア:3, すばらしい洞察)
この意見は、医薬品の開発にかかるコスト(お金だけでなく人も)を無視して
いますね。製薬会社が、巨額の研究費と研究人員を投じて新薬の開発を行うの
ですから、その投資の回収が担保されなければ、あまりにリスクが高くなって
しまい、新薬の開発をする企業がなくなってしまいます。
リスクに応じたリターンを担保する意味で、特許制度は必要ではないでしょうか。
問題があるのは制度ではなく、運用にあるのです。
・あまりに独占的な権利を与えすぎていること。
・期間が画一的に定められていること。
発明者は、他者に特許を使わせないことができますが、これは本来の特許の目的で
ある「知の共有」に反します。したがって、正当な理由なくしてライセンス拒否を
認められないようにするべきでしょう。また、どんな技術でも特許の期間が画一的に
定められているため、技術開発の早い分野では、それが足かせになりかねません。
分野や内容によって特許の期間を可変とするべきでしょう。
Re:制度の問題かな? (スコア:1)
不要なのはソフトウエア特許 (スコア:1)
医薬品の特許は必要不可欠と言われてますね。
「医薬品の開発にかかるコスト(お金だけでなく人も)を無視して
いますね。製薬会社が、巨額の研究費と研究人員を投じて新薬の開発を行うの
ですから、その投資の回収が担保されなければ、あまりにリスクが高くなって
しまい、新薬の開発をする企業がなくなってしまいます。」
というのが特許の本来の趣旨。
得に医薬品などは研究開発に長い期間と莫大な先行投資が必要であり、しかも出来た
医薬品や原材料を分析すれば、遥かに安いコストで類似品を作ることができます。
少なくともそれと同じ成分の医薬品を作ることさえできれば、効能と副作用が
同程度の薬になることだけは確実なのですから。(通常はどのような効能があるか
さえよくわからない。『神と悪魔の薬』サリドマイドだって、最初は睡眠薬だったのだ。)
だからもし特許で守られなければ誰も研究開発などしなくなるし、製薬会社はすべて
倒産するでしょう。
これに対してソフトウエア特許やアルゴリズム特許は『思いつく』だけならほとんど費用が
かからず、しかも似て非なる「発明品」は無数に存在します。このような中では裁判は泥沼に
なりやすく費用はうなぎ登り。その結果、ソフトウエア特許は先行者を守るための役には立たず、
儲かるのは特許ゴロだけという状況になっているのは、ソフトウエア業界の人間ならよく
ご承知の通りです。
だからソフトウエア業界の人間が多いスラド民にとって、特許が極めて悪い印象を
持たれるのもムリはないと思いますが、少しは他の業界にも目を剥けてやって下さい。
建設業界の例えでソフトウエア開発を理解するのが大間違いであるように、
ソフトウエア開発の例えで新薬研究を理解するのもまた間違いなのです。
Re:制度の問題かな? (スコア:3, すばらしい洞察)
『特許によってある程度情報が公開されるから、後発医薬品を作れる』というメリットがあると思います。
情報がないところからReverse engineeringできなくもないけど、そうした場合は先発医薬品との整合性が一切保障されないので、先発医薬品並みの治験を必要とし、後発の『安価』というメリットが消滅します。
#ついでに、医薬品で生産能力が追いつかないっていうのは極々稀です
#いわゆるブロックバスターと呼ばれるドル箱医薬品は、糖尿病薬とか高血圧系の薬が多く、継続して使用されるために在庫管理がものすごく厳格で、在庫が切れる=他の製品に乗り換える って事を意味しますので。
#尤も、某インフルエンザ治療薬みたいな例外もありますけど。
医薬品といえば、つい最近までインドでは物質特許が認められてませんでした(製法特許はありました)。
そのため、医薬品の製造と言っても後発医薬品しかインドではされてませんでした(特許で保護されないから、真似しても罰則がないので、怖くてできない)。
物質特許が認められるようになって、初めて医薬品の研究開発に本腰を入れられるって感じでしょうか。
他のコメントにもあるように、研究して開発した成果には対価が必要です。でないと産業が発展していきませんし。
不毛な特許対策をなくしたい気持ちもよく判りますけど、現状ではこれといった良案が見当たりません。
#ちなみに、日本の特許DBへのアクセスが最も多いのはC国だそうです。
#そのデータから自国に出願して、成立させてしまうというのがよくあるとか。
#特許制度がない場合にこれがもっとエスカレートするのかなと思ったら、現実的な解として現行の特許制度は悪くない気がします。
Re:制度の問題かな? (スコア:1, すばらしい洞察)
それはたぶん薬などの医薬品の開発の中身を知らないからだと思う。
薬の開発はものすごいお金が掛かかるので、開発に成功したものを保護しないと
誰もあたらしい薬を作れなくなる。それでも特許で保護される 25 年(だったっけ?)のうち
特許取得後に認可され販売まで持って行くのに 15 年程度かかるので、回収できるのは 10 年程度。
医薬品の場合は安全確認のための治験など他の工業製品とはちょっと条件がちがうので
独占的に販売できる権利がなくなったら誰も開発に必要なお金を回収できず、
新薬はもう作られなくなる。
Re:制度の問題かな? (スコア:2, 参考になる)
薬だけじゃないけど特許権の存続期間の延長制度 [jpo.go.jp]は今いろいろ話し合ってますね。
承認が下りないと特許の実施が出来ない場合、その間は実質的に特許権の期間が短くなる。
まあ長いのだけ見ても制度としてはおかしいし、一回の議事録だと
>過去5年間の期間延長出願の延長期間は、農薬分野で3年4月、医薬品分野では3年10月でございます。
四回の議事録だと、
>自家培養表皮につきまして平成19年に1件ほど承認実績がございました。こちらは臨床試験期間を含めると承認まで約6年かかっています。しかしながら、このケースは極めて異例なものであったため承認までに時間を要したということが薬事法上の審査報告書にも記載されており、この具体的事例は個別事情を多く含むと認められます
みたいな感じなので、15年と一般化するのは長すぎない?
ここから販売までで時間がかかるのかな。
Re: (スコア:0)
新薬開発にはとんでもない額のお金がかかります。特許により開発後一定期間の独占を認めることによって新薬開発するインセンティブを与えているわけです。
要は新薬開発コストをどうやって捻出するかという問題ですが、特許をやめた場合、私企業はどこも開発できませんから、結局税金でやるということになります。
もちろん今の状況が最善とはいいませんが、新薬開発のコストは結局どこかから出さなければならないわけです。話は単純じゃありません。
Re:制度の問題かな? (スコア:1)
>新薬の開発に大金をかけ、他に先立って開発を行うのは、それで利益が得られるから。
特許制度がある場合には、開発の費用が利益を越えないという限定なんだよね。
特許制度がない場合には、より多くをより売れるという場合に限定なんだよね。
>特許による保護がなくなれば、薬の開発に関連する情報は企業内で厳重に秘匿されるだろう。
特許制度がなくなった場合、秘匿して隠蔽が出来ることという限定になりそうだね>開発会社のみで生産
で、問題はそれが遺漏しないか?(製品について逆解析とか、情報漏洩とか)になるだろうね。
わたしは、生産能力が高くて、より隠蔽性の高い製品を作れる会社のみが特許なし制度の恩恵を受けると思う。
特に薬なんかの場合ではね、安くてよい製品で市場を席巻できて、第三者介入がほとんど無理な市場を作れる会社ということになりそう。
「今現在強い会社」のみが特許なしの恩恵を享受できて、他は無理という状況が作られかねないと、考える。
つまり、独占をより強くできる会社の牙をむかせることになると危惧しています。
Re:制度の問題かな? (スコア:1)
>薬の場合は絶対に無理でしょう。配合を秘密にしたまま行政機関の認可が下りるとは思えません。
なぞの魔法の薬(保険が効かないので高く売れる)が出回るぞ
Re:制度の問題かな? (スコア:1)
>そんなことしたら、しっかり認可受けて保険適用になったライバル社の薬しか売れなくなりますよ。
話の前提:製法の隠蔽(が上手くいっている)
問題はそこじゃない (スコア:4, 興味深い)
特許で本当に苦しい(面倒な)問題はそういうことではなく、
・明らかに特許性がなく、無効に出来るはずの内容で駄々をこねられたとき
・明らかに該当の特許を踏んでおらず、回避できる内容で駄々をこねられたとき
と思っています。
結局は[費用対効果]という事で、
無効裁判の費用よりも和解金を安く設定され、
会社としてはそれを飲まざるを得なくなる時が一番悔しい。
本当に腐った特許の侵害を通達され、
エンジニアも技術顧問も法務知財も弁理士も勝てる見込みを付けているのに
会社としては経費の問題でクロスライセンスを結ぶという結末。
モチベーションさがるわー
Re:問題はそこじゃない (スコア:1, 興味深い)
キルビー特許訴訟が思い出されますね。
米TIと富士通の「9年戦争」から今、学ぶべきこと [nikkeibp.co.jp]
元コメと同じように現場は勝てると判断したのに経営判断で妥協した企業が多い中、
最後まで戦い抜いた富士通の気概を、他企業の法務部門も技術部門も羨望の目で見てたとか。
Re:問題はそこじゃない (スコア:1)
# 日本国内の話に限定しますね。
私は、日本の特許制度は運用面等においても世界一のレベルにあると思うのですが、一点だけ、未だに納得できていない施策があります。
日本の特許制度の施策の最大の失敗は、異議申立制度をなくしてしまった(実質的に公衆審査の機会を無くしてしまった)ことにあると思ってます。
無効審判はコストがかかり過ぎるのが最大の欠点です。
特許制度の本来の目的は、発明者の権利保護ではない (スコア:4, 参考になる)
特許制度の成り立ちについてはいくつかの見方があるようですが、近代的な特許制度のそもそもの目的は発明者の権利保護ではありません。歴史上、製法を秘密にされたことで失われり、再発見・発明までに長い年月を要した知識が多々あるわけで、そういったものへの反省の上に特許制度があるわけです。逆に言えば、簡単に再発見できるようなもの、再発見する価値のないものは、そもそも保護の対象にする必要すらない。
現行の特許制度は、本来の趣旨にかえって反した運用になってしまっている点は多くの人が気づいていますが、なかなかこれを変えようという動きは起こらない。(中にいる人は抜本的なアクションがとりづらい)
いきなり特許制度をなくすということは不可能にしろ、特許制度の問題を再考させるきっかけという点では、海賊党が議席を獲得したのは素晴らしいことです。実際にこうした政治的行動を起こせる人がいるところが、欧州の良いところの一つでしょう。
# 日本だとなかなか…ね。
Re:特許制度の本来の目的は、発明者の権利保護ではない (スコア:2)
そんなのは実際に特許制度が廃止になってしまった場合の問題でしょう。現状の1議席から多くてもせいぜい数議席にしかならないであろう政党なのだから、いきなり特許制度がなくなる、なんてことは現実には起こりません。
別コメントにも書きましたが、特許制度が社会に貢献している面がある以上、制度そのものをなくすことは非現実的です。そういう意味で、私は海賊党の主張そのものは支持しません。
一方で、特許制度の運用上の問題点も感じていて、政治の場で議論の対象にはなってほしい。その意味では、海賊党が議席をとったことは素晴らしいと考えるわけです。
Re:特許制度の本来の目的は、発明者の権利保護ではない (スコア:1)
とくに、ソフトウェア特許だと「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されていながら、本当に高度なものだけ特許になってるかと言うと審査がザルだし、無効訴訟は金がかかりすぎて中小企業では手が出ない、という印象があります。
法律には目的がある (スコア:2)
---
(目的)
第1条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
---
で、現行法が現状の社会の中でこの目的に寄与しているか?つまり、ここでは「産業の発達に寄与している」か?
寄与しているとしても、それ以上の弊害を生んでいないか?
すごい早い仕事をするとか (スコア:1)
大企業がより大きくなるための商売道具 (スコア:1)
結局は大企業に吸い上げられてしまうか、
それに応じなければ大企業側の別の特許で囲い込まれて潰されてしまうでしょう
でも難しいのは独占禁止法と特許法という一見矛盾している法律を
いかに両立させるかでしょう
#その方法を考案して特許出願!?
Re:大企業がより大きくなるための商売道具 (スコア:1)
#と,考えるのは少し強引かぁ.
現状では特許出しすぎ。 (スコア:1)
誰でもその場で思い付ける程度のクソ特許が通りすぎてる。
まずは審査を厳格化する必要がある。
さらに特許料の上限を設定した上で、更新を一年ごと、かつ維持費の勾配を急にするとかする必要があるんでないか?
Re:現状では特許出しすぎ。 (スコア:3, 参考になる)
実際に特許出願をしている人間の立場で言わせてもらうと・・・
確かに、過去の出願は結構簡単に通ってました。
ちょうど10年弱くらい前はパラメータ特許とか簡単に通りましたし(製法のうち、パラメータの組合せで特許を出願する)、実施例がなくても『比較的』容易に通りましたし、場合によってはかなり広いクレームでも通りました。
最近は、それと比べたら通り難くなりましたね。
公報とか読んでいると、最低でも実施例が必要。
更に情報提供で他社特許をつぶそうとしますので(やったりやられたりしてます)、進歩性の部分をかなり強調できないと通らない気がします。
でも一番の要求は、審査をもっと早くしてほしいってところでしょうねぇ
特許出願した人間の呟きでした。
Re:現状では特許出しすぎ。 (スコア:1)
>でも一番の要求は、審査をもっと早くしてほしいってところでしょうねぇ
現在は
・不況の影響で出願件数が目減りしている
・特許庁の任期付き審査官制度によって中途採用された審査官が一定数に達した [jpo.go.jp]
ことから、滞留案件が減少傾向に転じている、という話を聞いております。
現状でも、一定の要件さえ揃っていれば、早期審査制度を利用できます [jpo.go.jp]。
出願から一年足らずで特許査定になった案件もあります。
先行者保護が無ければギャンブルは出来ない (スコア:1, すばらしい洞察)
例えば昔の松下的に大きな資本と開発リソースを持った会社が二番煎じに特化してしまった場合、全くの保護が無ければ新規参入なんて事はほぼ不可能になってしまいますよね。
特許で保護されていてもマネシタなどと揶揄される様な販売戦略も可能なのは、新ジャンルのマーケティングは無視しても、それでも強力な開発能力を保持していたから。
しかし、特許保護も無いのであればそれこそパチモノ天国万々歳。
わざわざ手間隙掛けて市場開拓を行おうというモチベーションは明らかに下がると思うのだが。
特許の問題は期間や範囲や内容の問題であって、公開・保護する事自体の問題じゃ無いだろう。
自分の国だけしかないんだったらいいけどさ、 (スコア:1)
他国にごっそりと技術を持っていかれる可能性は考えた方がいいんじゃないかなぁ。
# 欧州は、お隣の国に技術もっていかれた経験とかないのかなぁ?
# あるなら、まともな政治団体ならそんなこと言い出さないと思うんだけど。
1を聞いて0を知れ!
Re:自分の国だけしかないんだったらいいけどさ、 (スコア:1)
少なくとも欧州で特許とってたら、欧州ではそれができなかったのに、できるようになる。その被害はどうお考えですか?
1を聞いて0を知れ!
根幹のアイデアよりも (スコア:1, すばらしい洞察)
商品化する部分のほうが非常に泥臭く労力を要することのほうが多いわけで、
誰でも思いつきそうなアイデアを特許化しておいて、
そういった商品化の努力をまったく払わない特許ゴロのような連中の特許権行使は
ある程度は規制されてもしかるべきと思われる。
庶民感覚に照らし合わせて、不公平感をなくすという意味では
意外と裁判員制度とかに向いている案件なのかもしれない。
Re:根幹のアイデアよりも (スコア:1)
>そんな新規性の乏しいものは特許と認める方が悪い。
>クズ特許を減らすだけでどれだけ世の中の効率は上がることか。
その手の特許は本質を突いてないので回避が容易なものが多いですね。クズ特許は前例を見つけておいて後は放置です。
っていうか、先行文献探したらアンタの会社の先輩が全く同じ特許書いてるじゃねぇか!みたいなのを見ると笑えます。
不勉強な海賊党だ (スコア:1)
>特許システムは、企業秘密などによって技術が広まらない害をなくすために作られたはずなのだが、現在ではむしろ技術利用を阻害する要因となっている。
>特許を廃止すれば、研究開発費用を大きく抑制でき世の中はむしろ効率的になるだろう、と言う主張
以前の韓国や現在の中国などの「特許制度が遵守されきれてるとはいえない外国」の存在を考えて、規格間競争における外部経済性が望める技術なら特許出願して公開しているし(一部の製品では特許料収入なんか見込んでいるのか?)、真のコア技術はブラックボックス化して公開していないはず。リバースエンジニアリングしてクリーンルームで同様な製品を作れる技術を持つライバル社のみ対抗できる。
その意味では特許制度は最初の意図とは反しても、あるていどの存在価値はあるんじゃないかね。
育つのは特許ゴロだけ (スコア:0)
> 素人考えからすると、特許がないとベンチャーが育つ余地が失われるようにも思える。
まともに製品を開発している会社は、自社製品を大手企業の抑えている特許に抵触させないということがほとんど不可能なので、クロスライセンスでも結ぶしかありません。ですから特許で儲けようとする会社は普通それだけを事実上の業務としていて、自ら製品開発はしません。
Re:育つのは特許ゴロだけ (スコア:2, すばらしい洞察)
それと特許についての勉強不足でしょう。
製品開発といっても、製品規模だけの視点だけから見ても、素材などのマテルアルから
巨大製品までかなりの幅があるものに対して、そんな二択みたいな結論に持っていけるほど
簡単なものではありません。
Re:育つのは特許ゴロだけ (スコア:1, すばらしい洞察)
いや、だからベンチャーは成り立ちにくくなるじゃん?
だって同じアイディアで、より大規模かつ潤沢な初期投資で大手が同じ事をやれるようになるんだし。
特許があればまだそのアイディアを売ったりライセンスしたりで稼いでのし上がっていくチャンスもある。
何も新規技術を開発したベンチャー自体が、その技術を使った製品(これは多くの場合他社の特許も利用する必要がある)そのものを作る必要はないわけだよね。
極端だねぇ (スコア:0)
まるですべてがそうだと言わんばかりだが、「こともある」ってだけだよね。
>特許を廃止すれば、研究開発費用を大きく抑制でき世の中はむしろ効率的になるだろう
前提からして一部しかみてないから、結論も極端。
物を作らない人たち、要するにフリーライダーな人たちに多い見方だ。
はじめから特許は世のためじゃないですよ。 (スコア:0)
特許を取った技術は世のためであったとしても、です。
Re:はじめから特許は世のためじゃないですよ。 (スコア:2)
全くその通りだ。
あえて世の為人の為という見方をすれば、製品の品質が良くなってきていることかな。
特許の目的は技術を公開させることですよ (スコア:1, 参考になる)
ウソは書かない
特許の目的は、技術の独占を防ぐことにありました、当初は。
秘伝の公開と引き換えの餌が権利保護だったのです。
Re:特許の目的は技術を公開させることですよ (スコア:1)
ウソは書かない、というなら、「当初」がいつの事例を指しているのかぐらいちゃんと示しましょうよ。
私の理解では、制度としての特許は、技術の国外流出を防ぐための特権付与(1474年 ヴェネツィアの例)、あるいは特権を与える代わりに上納させるといった目的(1623年? イギリスの例)あたりが初期の事例かと思います。
どちらも、技術を持つ者に対する独占権を付与しています。
Re:特許の目的は技術を公開させることですよ (スコア:2)
少なくとも建前上は、現代でも独占が目的じゃないですよ。だから、内容は公開されているしし、特定の一人にだけ技術を供与することは許されないし、同等内容なら同等価格で供与しなければならない。
公開は、第三者の権利を侵害していないか指摘を得られるからという目的でもあるけど、極端な話、単純に独占させるためなら、そんな必要はないんです。出願者に独占させると決めるんだから。でも、独占ではなく、平等の権利を尊重するために公開するわけです。
実際に発明した人が、コピー品を作った人に市場で負けたら、平等ではないから。資本力で廉価なコピー品を作られたら、市場で負ける可能性は高いでしょ?
Re:特許の話題ならまずこれを聴いてから (スコア:1)
直接フラッシュなんぞにリンクしてるけど、
ウィルスとかブラクラではないようです。
(本当にそうではないとは私は保証できません)
説明しないでリンクだけするのはやめましょう。
>ローレンス・レッシグ教授の2002年オライリー・オープンソースコンベンション基調講演
>(8.45MB 再生時間31分40秒)
長すぎて聞いてられない。という私のような人は、したのページのリンクにテキスト版があります。
http://ittousai.org/mt/archives/2003_04/free_culture.html [ittousai.org]
SFS(GNU)のエライ人が、著作権とか特許が自由を脅かしてるよって話をしてます。
Re:特許の話題ならまずこれを聴いてから (スコア:1)
リンク先ページ中の下ではないです。
日本語不自由でごめんね。
「日本語テキスト版(字幕作成のための草稿)」のところです。
ぶっちゃけコレ [ittousai.org]です。
Re:マイナス面を (スコア:1)
>- インテリアコーディネイトに特許があればレストランがテーブルの配置を工夫したとき特許を調べないといけない
先行文献を全部回避して請求項を作ること自体至難の業でしょう。最近の特許庁の判定基準からいけば、構成が同じだからダメ、と弾かれるだけのような。
先行文献が存在せず独自性がありかつ機能的に合理性のある優れた配置なら、保護されてしかるべきかと思います。
>- 教育に特許があれば学校の先生が生徒に教える工夫をしたときに特許検索をしないといけない
教える工夫というのが具体性がなくてよくわかりませんが、個人の技量に頼るようなモノは特許にはなりません。請求項として簡潔に文章にまとめられるような内容というのも想像できませんが、仮にそういうものがあるとしたなら保護されるべきかと。
>- ソフトウェア業界で特許が製造業並に浸透していれば週に半日~1日は特許調査を行わなければならない
特許の理念を考えると、やった方が良いと思いますが。特許を調べない人が思いついた“凄いテクニック”は、九割方は先行特許があります。知識として過去の技術を頭に入れておくのは利点の方が多いですよ。無駄な発明をしなくてすみます。
>- ソフトウェア業界で特許が製造業並に浸透していれば特許回避の為に保守性が悪くなっても汚いコードや不要なコードを書かなければならない
ライセンス料と特許回避のコストを天秤にかけて有利な方を選択しているだけではないかと。
>みんなが言ってるベンチャーの保護に対しては懐疑的です。特許をどれだけ多く出せるかは体力勝負なので大企業が一般には有利です。
日本の特許のシステムって、今で言うベンチャーみたいな人が発表した優れた機械を大手メーカーが速攻でパクって量産化して大もうけ、みたいなことが何度も起きたので作られたんじゃなかったでしたっけか?大企業が真面目に研究・開発に費用を割くような状況ができていることだけでも差を埋めてますし、随分世の中に貢献していると思います。
Re:マイナス面を (スコア:1)
そんなレベルであれば誰も困らないのでは。
何の特別さもないと考えて思わず使いそうな部分にまで特許が存在している(しかも膨大な数)
というのが問題なんだと思います。
そして無効訴訟はコストに見合わない。
Aというモノを作るのに「使える特許」をあらかじめ探すのは簡単ですが
Aというモノを作るのに「使ってはいけない特許」をあらかじめ探すのはコストが膨大になる。
で、結局モノを作ってから(作りながら)抵触してないかを探すことになる。
>ライセンス料と特許回避のコストを天秤にかけて有利な方を選択しているだけ
そのライセンスが数個程度であれば、「選択している」といえるのでしょうけど。
Re:マイナス面を (スコア:1)
>そのライセンスが数個程度であれば、「選択している」といえるのでしょうけど。
ソフトウェア特許に関して言えば、期限切れの特許がまだ存在してないのが問題なんじゃないですかね。期限切れの“使える特許”だけ調べておけば問題ないのでは?その範囲で技術を使うなら侵害は発生しないはずですし。
訴訟の話まで持ち出すと、特許固有の問題じゃなくなるのでやめときます。
Re:マイナス面を (スコア:1)
>20年も前の特許はほとんど使い物にならないです。ただでさえ大変な調べる手間がさらに増えるだけ。
どんな技術も基礎をすっ飛ばして使うことはできません。基礎技術の特許は1件あれば回避には十分足ります。使いものになる特許なんて、いつの時代でも一握りです。
>「このタイミングでガベージコレクタを呼ぶ」とかいちいち調べたくないでしょう。
一から調べるのは手間でしょうね。しかし、五年も特許調査を継続して続けていけば、自前で容易に検索可能なデータベースが出来上がってるんじゃないでしょうか。
>更にライセンス希望しても競合なら許可しない可能性もあります。
正統な権利の行使だと思います。ライセンスを希望するくらい優れた技術の場合、周辺からガッチリ押さえられてることが多いですけどね。